レッスルエンジェルスシリーズの妄想を放り投げるプログでした。今はゲーム話とTRPGがメイン?
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サバイバー2リプレイSS 旗揚げ興行その1 トラブル ver1.1
サバイバー2のプレイを元にしたSSです。前回はこちら。すでに、どの辺りがプレイを元にしているのか本人も不明ですが、申し訳ありませんごめんなさい。そして無駄に長い、これぞグタグタw ウム、お恥ずかしい。

内容 旗揚げ興行だが……

サバイバー2のプレイを元にして書いていますが、基本的に創作です。独自設定や、現実的でないこと、プロレスにそぐわないこと、不当に扱われているキャラ等々、色々問題は多数発生しているかと思いますが、ご容赦のほどを。基本的にテキトーに書いてますのでご了承ください。

団体名 風月会 1年目7月。

メンバー 金森麗子 ウィッチ美沙 小早川志保 ガルム小鳥遊(2P) パンサー理沙子(2P) ディアナ・ライアル 上原今日子(コーチ)

今回の出来事:旗揚げ興行。

ちょっと間違った所やら何やらを修正。まあ、ほとんど変わってませんので以前に読まれた方はもう一度、見る必要はありません。
ローズ「まったく! こんなことになるなんて!」
小さな控室にそんな甲高い声が響いた。ローズ・ヒューイットのきつい目が、いつも以上に鋭く尖る。
ローズ「入院でしばらく安静!? 興行はどうするつもりなのですか!」
2号「申し訳ありません! お嬢様!」
ファントムローズ2号が必死に頭を下げている。上原が社長にすがりつくように、
上原「ど、どうしますしょう、社長…… やはり中止するしか……」
ローズ「上原さん! 何をおっしゃって! 私に恥をかかせるつもりですか!」
上原「し、しかし!」
普段は頼りになる上原も、旗揚げ興行の選手が当日いきなり入院してでは、うろたえを抑えられないらしい。社長は、なるべくのんびりと、
社長「まあ、まず入院した選手の状態はどうなってるか説明しますんで」
ローズ「悠長におっしゃってないで早くなさい!」
社長「はいはい。まず……」
やれやれ、開幕興行だってのに、まずいことになった。社長は緊張した面持ちの面々をぼんやりと眺めながら、今日の事を思い返す。

金森「そりゃ!」
上原をロープに振り、すぐ反対側のロープに向けて走り反動をつけ、出会った所で飛んで両足蹴り、ドロップ何とかだっけ? 社長は目を細めながら金森の技を鑑賞する。少し前まで素人目でもぎこちなかったものであるが、今は流れるように技を繰り出しているように見える。
社長(大したものだね~ たった3ヶ月ちょいであそこまで動けるとは。上原様様、かな?)
上原自身は、自分は大したことはしていない、と言っていたが。慎み深いというべきか。
上原「考えない! 動きを止めるな! 相手を休めずに攻めるの!」
倒されたと思った上原が、後ろにくるりと回って一瞬にして立ちあがる。ドロップキックで吹き飛んだのではなく、後ろ受け身を使って自分から転がったらしい。そんな動きをすると思っていなかったのか、驚愕で固まった金森を上原が叱咤する。
金森「は、はい!」
そう金森は大きな声で答えるも、先ほどの伸びやかな動きとは違い、ちょっと躊躇うような踏み込み。予想外の事には、さすがにまだ対応できないというところだろうか。
青森県のとある市民体育館。田舎で市民体育館と言う名前から、古い学校にあるような垢がこびりついて黒ずんだ様なものを社長は想像していたが、壁は白いクリーム色で汚れ一つない。せり出し型のひな壇の塗装は剥げ一つなく、柔らかいクリーム色のリノリウムの床も綺麗に輝いている。そして適度に冷房すら利かせられるこの体育館、何だかシックでおしゃれなオフィスビルみたいだと思う。
社長(バブルの遺産、とか言ったら失礼かな)
田舎の癖に分不相応だとは正直思ってしまうのだが。もっとも、この1000人は入れるであろう広々とした会場は、風月会という小さな生まれたての団体には上等すぎるくらいにすばらしいであろうから、むしろ感謝したい。
本日は旗揚げ興行である。ただ、朝の時点での準備は終了し、試合開始は夕方前後から、今は昼ちょい、ぽっかりと暇である。そう言う訳で、社長は金森と上原のスパーリングをぼんやりと眺めている。
美沙「む~う! 退屈のですぅ~!」
横で美沙がヒンズースクワットをしながら呻いている。普通に蒸し暑い室内で運動量を上げているためか、凄い汗が流れて薄い練習着が透けて色々見えている。練習中なのだから何が目に入っても不可抗力であろう、うん。
美沙「何で! 美沙は! スクワットなのに! 麗子さんは! スパーしているのですか!」
社長「受け身がまだ不完全だって言ってたろ、上原コーチ。怪我しても困るだろう」
美沙「それは! 分かっているのですが! 300! うもぅ!」
むくれながらも手を抜かないこの子は、いい子だと思う。テンポを乱さず、上下動を続けながら美沙は、
美沙「しかも! 専用の! 水着! まで! 用意! してもらって! 美沙は! まだ! 貰ってないのに!」
社長「未だ、できてないんだ。ごめんな」
美沙「たった一ヶ月二ヶ月でこの違い。当然だけど理不尽なのです!」
社長「すまんすまん、そう怒るな」
実は美沙の水着は、もう出来ているのであるが事情あって内緒にしている。
ローズ「このような暑苦しいところで何をしているのです?」
社長「あ、どうもヒューイットさん」
声をかけてきた、豪奢な金髪と色とりどりのバラが刺繍された黒いスーツの女性を、社長は立ちあがって迎える。威圧的ですらあるその豪華な姿はGWAエースにして社長、世界に轟くヒューイット財団の令嬢でもあるローズ・ヒューイットである。ローズは社長をさっと見渡すと、
ローズ「ごきげんよう、イツカミ。ローズでよろしいと申したはずですが? しかし、晴れ舞台前だというのに見苦しい姿ですわね。差し上げたバラの香水は使っておりますか?」
日本語の上手い人である。聞けば12カ国語を使いこなせるのだそうだ。社長の方は英語のみ、受験勉強以来で会話不可のジャパニーズイングリッシュ(笑)である。以前に打ち合わせで何回か会ったが、ちょっと抜けてはいるが完璧な人、という印象を社長は持っている。
社長「は、はい、ヒュー、ローズさん。ありがたく」
ローズ本人から、醤油臭い、と久しぶりの対面早々に言われ渡された香水は、ケースからしてまがう事なき高級品、実際のお値段はウン十万という代物。ちっこい液体風情の癖にそのあんまりの高さは霧子を卒倒させた程だったが、バラの匂いがきついので勘弁してほしいと思う社長には猫に小判である。
2号「……」
黄色が基調の、マンガとかでよく見るメイド服のようなものを着た、本名不明ファントムローズ2号(名前を聞いたら、これが今の私の本名ですと棘のある無表情で答えられた。触れるなと言うことらしい)が後ろから会釈をくれた。この暑いのに厚手のフリフリ服、それが肌に張り付くくらい汗を流し大変そうである。それでも、優しく微笑み(ローズと話していると睨まれている気がしなくもないが)スカートの端を掴んでの優雅な会釈はメイドの意地と言うものか。体の形がくっきりして眼福というか、美沙と同じで目のやり場に困る。
GWAとのつながりは上原から。上原が昔アメリカに武者修行していた際に、縁があったそうである。もっとも、ヒューイット財団に買収された後は音さもなかったそうなので、今回契約を結べたのは僥倖と言っていい。
ローズ「しかし、日本と言うのはどうしてこうも湿気が強いのでしょう。こんな湿気が強い状態では、私のバラが枯れてしまいます。すぐ冷房をお願いしますわ」
そう言いつつ、彼女は汗一つかいていない涼しげな表情なのだが、淑女のたしなみと言う奴だろうか。
社長「いや、冷房は金がかかるので。夕方の試合までお待ちを」
ローズ「……まったく、ケチ臭いですわね。2号! あおぎなさい!」
2号「は、はい。お嬢様」
そう答えると、2号は懐から孔雀の羽根のような団扇を取り出し扇ぐが、すぐローズは不快そうに眉をひそめ、
ローズ「生ぬるい! もっと涼しくあおぎなさい!」
2号「あ、あの、暑い空気をあおいだ所で意味がないからかと」
ローズ「うるさい! 言い訳はよろしいからしっかりあおぎなさい!」
そう険悪な雰囲気を発するローズ達に暑いのは自分がケチったからなので多少責任を感じ、社長は持っているペットボトルのお茶をローズに向けて、
社長「ローズさん、これでも飲んでください。買ったばかりですから冷えてますよ」
ローズ「あら、どうも。ふむ、見た目からして安物ですわね」
高いペットボトル茶と言モノがあるとは思えないが。差し出されたお茶に手を伸ばしたローズだったが、
2号「お嬢様、まず私が毒味を!」
そう言って2号が、飛び付くようにペットボトルを奪い取り、仰ってゴボゴボっと一瞬に空にしてしまった。
ローズ「2号、全部飲んでしまっては毒味とはいえないでしょう」
ローズに眉をしかめられるも、2号はどこ吹く風のさわやかな笑みを浮かべながら、
2号「どうやら毒はないようですが、安物でまずいものです。お嬢様にふさわしくありませんから、私が頂いたのです!」
ローズ「そ、そうですか」
そう断言してローズを怯ませつつ、
2号「で、もう一本ありませんか?」
社長「……どうぞ」
ギラギラした目で見られたので、黙ってお茶を出しだしておく。まあ、似合いの主従な気はする。ごくごくと旨そうに飲む2号をローズが微妙な顔でつめていたが、諦めたのか気を取り直すように咳ばらいをし、
ローズ「で、何をなさっているのです、彼女らは?」
社長「ああ、スパーリングですよ、スパーリング。本番のリングで実践風味にやるのも良い練習になるんだそうです」
本番に少しでも近い雰囲気に慣れておくというものらしい。金森の連続のミドルキックが、パシっという良い音を響かしている。
上原「そう! そうやって大ぶりにならず、流れるように攻めていくの! 急所を狙う、弱った所をねらう、そのためには崩す、崩して弱点を作り、崩すためにはとどまらず攻める! っ!」
社長「お!」
金森に右のミドルに続けた左のローで、足を取られたらしく上原はよろめき、
金森「ええい!」
その隙を逃がさず、金森は気合い一閃、フロントハイキックで上原の顔を打ち抜いた。社長は思わず立ち上がったが、
美沙「ああ、おしい!」
社長「おしいって、なんでだ?」
社長は完全に決まったと思ったのだが、その問いに対し横からローズが、
ローズ「崩れに任せて倒れこみましたわね、上原さん。あのスニヨンの子の蹴りは良いものでしたが、くぐられました。かすっただけです」
社長「マジですか……」
リングの方を見てみれば、ローズ達の言が正しかったらしく、上原はダメージがなかったようにすぐさま立ち上がり、
上原「そこで止まらない! 動揺しないっていってるでしょう! さらに一手かければ関節でいけるんだから!」
驚いて唖然としていた金森を叱る。ローズはそんな様子を見ながら美沙に声をかけて、
ローズ「しかし、そこのあなた。良く見ていますわね、良い眼力です、お名前は?」
美沙「ど、どうもなのです。天神美沙なのです」
ローズ「ふむ、覚えておきますわ」
社長「あ、あーと! ろ、ローズさんもすごいですね! あんな早い動きをすぐ理解できるなんて!」
美沙を隠すようにローズの前に立って、社長が問いかける。
ローズ「当然のことを褒めても何も出ませんわよ? しかし、先程のお団子の方のコンビネーション、なかなか良いものでした。ただ、惜しむらくは体格がないので威力が足らず、崩しきれなかったことでしょうか」
社長「まあ、未だ始めて3ヶ月程度の新人ですし、徐々に大きくなってくれるとは思いますが」
そう言いつつ、社長は多少冷や汗をかく。こんなGWAに比べればチンケとしか言いようがない団体の興行に何故、ローズご本人がいらっしゃったかと言う事と、名高き上原が育成した新人をスカウトするため、だそうだ。どういう理由であれ来てくれるのは光栄だが、堂々と引き抜きをするためと言われると、社長としては頭を抱えたくなる。選手をほめられたことを喜ぶべきか、奪われるのを警戒するべきか。
ローズ「それにしても細い。もう少し、筋力をつけた方が良いのではなくて?」
社長「育成は上原に任せていますので、彼女に何か考えがあるのでしょう」
ローズは社長の答えとも言えぬ答えに軽く頷き、じっとリングを見つめる。スパーリングは再び金森が攻め込んでいたのが、疲れたのか金森の攻撃が緩み距離を取ろうとした瞬間、上原が飛びついて足から抱え込み一瞬にして抑え込んだ。スモールパケ何とかだっけな!? 早い! 社長が目を丸くしている間にスリーカウント。ローズもふむふむと、感心したようにうなずいている。
上原「攻撃を休んだその時が一番危険、気をぬいて迂闊に下がろうとすると付け込まれるの。試合なら、常に警戒だけは残しておかないと。警戒しているって言う態度だけで、相手の動きを抑えられるし」
金森「は、はい!」
上原「それと……」
ローズ「現役を引いても技は衰えず、と言ったところでしょうか。さっきの避けもそうですが、相手が引いた刹那を捉えられるとは、さすがと言うべきですね」
アドバイスをしている上原に向けて、ローズが声を掛ける。
上原「あ、どうもこんにちは、ローズさん。ご挨拶もせず、申し訳ありません」
そう言いつつ、リングから降りてくる現役時代の水着姿の上原。なるべく、実践に近い格好の方がいいということで持ってきたそうだ。水着をピッチリまとう、しなやかな体は現役をやめて数年もたっているとは思えない。
ローズ「いえ、良いものを見させていただきましたわ、上原さん。引退なんてしているのは惜しい。どうです? 私の所で復帰なさっては? 契約は○○○ドルお支払いしますわよ?」
社長「ブッ」
コーチの方を直接かよ! 提示された金額は、今の給与の10倍である。上原は驚いて噴き出した社長をおかしそうに見つめながら、
上原「ふふ、遠慮しておきます。ローズさん相手では、引き立て役も難しいですし」
ローズ「ならコーチとしてはどうです? 私の所にクレアという有望な若手がおりまして」
社長「いやいやいや、さすがに上原は渡せませんよ」
社長は気を取り直して何とか軽く笑いつつも、割って入っておく。ローズは冗談めかして微笑んでいるが、目だけは鋭く光っているので油汗ものである。
ローズ「おほほほほ、慕われているようですわね、上原さん」
社長の警戒がやや露骨になってしまったのが滑稽だったのか、ちょっと固くなった雰囲気を仕切りなおすためか、ローズは声を出して笑いだす。上原も優しげに眼を緩ませ、
上原「ええ、ありがたいことです。そうそう、麗子、お疲れ様、上がっていいわよ。ストレッチを忘れないようにね。
上原は暑い中のスパーリングの後だというのに、ちょっとしか汗をかいていない。経験の賜物であろうか。対する金森は、汗をだらだらと流しているが元気よく、
金森「はい!」
上原「美沙は終わった? 大丈夫?」
ヒンズースクワットは終わったものの、ぐったり地面に手を付きながら俯いている。あまりの蒸し暑さの中で運動するのが堪えているっぽいが、それでも声を張らせて、
美沙「ハイなのです。全部終わったのです!」
上原「そう、貴方も今日はもういいわ。お疲れ様」
社長「よ、二人ともお疲れさん。麗子、いい動きだったぞ」
社長も声をかけておくことにする。
金森「そうかな? もっとうまくいけたと思うけど」
そう言いつつも嬉しそうにふんわり笑う金森は、さらりとした汗の反射で輝いて健康的に見え、それが社長にはどこか眩しい。美沙や2号と同じで水着が汗で張り付いて、胸やらなんやらが透けたり強調されたりして眼福なだけかもしれないが。
社長「そうか? もう試合にも出れそうなレベルなんじゃないか? 素人目にも綺麗な動きだったし、もう少しで上原コーチから一本取れそうだったろ?」
金森「えへへ、ありがと。でも、ちょっとふらつかせられただけで、結局かすりもしなかったし。やっぱりちゃんと決めて倒せないと駄目だよね」
ローズ「あれは、上原さんを褒めるべきでしょう。一流どころでも、あの蹴りをああも完璧に避けるのは難しい」
ローズがそんな事を言ってくれる。金森は声をかけられると思っていなかったのか、ちょっと面喰ったような顔をしていたが、すぐかわいらしい笑顔を浮かべ快活に、
金森「どうもです! ローズさん! 見ていただいてうれしいです!」
ローズ「ごきげんよう。レイコさん、でしたね。新人にしては、なかなか良く動けていますわよ」
ローズが金森を褒めたことを喜ぶより警戒の意識が出てしまい、社長は自分は神経質すぎるかもなと思う。
金森「ありがとうございます! 早くローズさんみたいな凄い選手と戦いたいです!」
ローズ「せいぜい努力なさることです。多少良いとは言え、あなた程度では生半可な事では私には届きませんからね」
やや罵倒するような言葉が混じるも金森は特に動ぜず、さらに、
金森「はい、頑張ります! あ、何かアドバイスとかないですか! ローズさんから見て!」
そんな申し出すらする。唐突ではあったが、ローズはちょっと微笑みを深めながら答えてくれる。
ローズ「そうですわね。崩す、という方法はたくさんあります。上原さんは、攻めの連続性に重きを置いているようですが、例えば」
そう言って、ローズは金森の手を取ると、
金森「! 痛い痛い痛い痛い!」
社長「ちょ! ちょっとローズさん」
悲鳴を上げて膝をついた金森に、社長は慌ててローズを止めにかかる。どうやら、手首を関節を強引にひねったらしい。
ローズ「このように、圧倒的な力によって崩すこともできる。痩せこけたあなた向きとは言い難いですが。しかし」
ローズはすぐ手を放し、手首を抑えている金森を見下ろしながら淡々と続ける。
ローズ「あなたの打撃は、少々軽すぎます。ダメージが薄かったからこそ、上原さんも簡単に対応できた。力の元は、筋力。もっと体を大きくして、威力で崩すということも出来るようになっておきなさい」
そうしてローズは言葉を切る。金森はローズのアドバイスを聞き、ちょっと涙目だが笑顔で、
金森「はい! 頑張ります! ありがとうございました!」
そう立ち上がって一礼する。そんな金森を見て、
美沙「む~う! 美沙には! 美沙には何かないのですか!」
ローズ「その程度でへばる方には、どんなアドバイスも無意味です」
美沙「ぐふぅ! 一刀両断なのです……」
大げさによろける美沙にローズはふっと鼻で笑い、
ローズ「早く基礎を作ること、まずはそれからです。眼力は良いのですから、こそこそとした立ちまわりは上手くなれるでしょうね」
美沙「何だかカッコ良くないのです…… もっとためになるアドバイスが欲しいのです」
そう言ってしょげかえる美沙。ヒンズースクワットしかしてないのに何をアドバイスしろと言うのかというかもうちょっと礼儀作法をだな…… といろいろ考える社長。
上原「さて、話はそれくらいにして、二人とも着替えてきなさい。夏でも汗は体を冷やすのだから。ローズさんも、アドバイスありがとうございます。あと、美沙もちゃんとお礼をいいなさい。失礼でしょう」
ローズ「単なる戯れですから気にする必要はありませんわ。では、お二人とも、ごきげんよう」
ローズにそう声を掛けられ、ありがとうございます! と二人はお辞儀をし、そのまま出入り口へ向かう。二人が出ていくのを社長たちは見送った後、
ローズ「さて、私もあなたと少しお話をしたいのですが」
ローズがそんな声をかけてきた。さて、何か話があったかどうか? 重要な事なら霧子君を呼ばないといけないなと社長は思いつつ、
社長「そうですか。じゃあ、ここの喫茶店で良いですか?」
ローズ「結構」
そう鷹揚と言った風情でうなずくローズに上原が答えて、
上原「分かりました。ところで、他の方たちはどうするのです? 1号さんとかは?」
ローズ「……いえ、その」
2号「1号は他の選手を連れて食事です。私がいるので問題ありませんね、お嬢様?」
ローズ「ええ、問題なぞあろうはずがありません、ええ!」
2号の問いに、ちょっと吐き捨てるような感じでローズは答える。さて、何があったんだろう?
社長「でも、1号さんがローズさんの傍を離れるなんて珍しいですね」
ファントムローズ1号(本名不明、ローズお嬢様から頂いたこの名前が本名ですとの事)2号の姉で同じくローズのメイド、ローズお嬢様一筋の忠犬みたいな人なので、傍を離れているのは珍しい。
2号「何でも1号が、この地方の名物をぜひ食べてみたかったというので、ローズお嬢様がぜひ行ってらっしゃいとお暇をお出しに、失礼」
2号は懐から携帯を取り出す。ビービー携帯が震えているから電話だろうが、さて、誰からだろう。
2号「はい、1号ですか。何用です、え! 入院!」
いきなり物騒な単語が出て、一同ぎょっとして2号を見つめる。
2号「何でまた! ふむふむ…… 食事を食べたらはいた? しかし何故……」
しばらく色々と話をした後、2号は電源を切り、
ローズ「一体、何事ですか?」
すぐさまローズが詰めよって問いただす。
2号「そ、その! 食事に行ったメンバーが嘔吐などにより病院に運ばれました! 原因は不明!」
何それ! 社長は息を呑んだ。慌てて上原の方を見てみると、彼女も口を半開きにして呆然自失と言った風情である。ローズもさすがに驚いたのか、先ほどまでの余裕ある態度は消えて泡を飛ばして叫ぶ。
ローズ「それで! 選手の状況は! どういうことなのですか!」
2号「えっと、その……」
2号も動揺しているのか、普段の冷静さもなくオドオドと視線をさまよわせ、上手く言葉を発せられない。社長はそんな様子を見ながら、頭を切り替えるように首を振り、
社長「とりあえず、電話をし直して病院の場所を聞いて下さい。様子を見に行かないと」
ローズ「そ、そうですわね! 2号!」
2号「は、はい!」
続いて、ショックでボウっと突っ立ったままの上原に向きなおり、
社長「上原さん! 他の選手たちに戻って来るよう、連絡をお願いします」
上原「は、ハイ! 分かりました」
さて、後はと、社長はやるべきことを考えつつ行動を開始した。

社長「と言う感じの、集団食中毒だそうです。命とか後遺症の心配はないそうですが、しばらく下痢やおう吐は抑えられない、1日2日は安静だそうです」
社長の説明を聞いた誰も彼もが緊張した固い顔である。着替えた後、美沙とさて何をしようと話していたら突然呼び出されこんな話、金森も不安げに周りを見回すしかない。
状況的には、GWAの選手と風月会の選手が、レストランで食事をしたら大当たりして病院直行と言う話。で、その選手は今日、興行に参加する予定でした。いつもは落ち着いる上原も甲高い声で、
上原「こ、興行には! 興行にはどうなんです!」
社長「ドクターストップが、かかったから無理だね」
上原「そんな……」
上原は暗澹たる面持ちで、壁に倒れ掛かってしまう。小鳥遊も難しい顔で、
小鳥遊「正露丸とかの下痢止めで、どうにか、どうにかならないのか?」
社長「重度だからな。正規の医薬品でも、すぐには無理だそうだ」
ローズ「ただの下痢ではありませんか! 気合いで何とか抑えさせなさい!」
ローズが神経質に叫ぶ。彼女は先ほどの優雅な様子はなく怒鳴り散らしていて、金森はその大声を聞くたびに自分に向けられた訳でもないのに首をすくめてしまう。
社長「いや、気合いでどうにかなるような話ではありませんよ。安全上、病人を試合に出すわけにはいきませんし」
社長はローズの苛立ちを真正面から受けているのに、いつもと変わらない調子で答える。金森は大変だなと思うと同時に、どうしてこんなに余裕なのかと不思議に思う。普段はボケっとしたお人よし程度の印象なのだが、自分が考えている以上に肝が据わっているということなのだろうか。
社長「それに、トイレにかじりついていないといけないくらいだそうですから、試合なんかしたら漏れてしまいますよ。それはそれで、別方面に受けそうですが」
全員「……」
前言撤回、ただ単に無神経なだけのようである。無言で全員から睨まれ、さすがの社長も誤魔化すように咳払いをして、
社長「とりあえず、入院した選手は興行に参加できない。これはどうしようもないことです。無事な選手は、小鳥遊、ディアナ、2号さん、バニーさん、ビートンさんの5人ですね」
小鳥遊「今回の目玉である、ディアナが無事なのは良かったが……」
バニー「このままやろうとすると4人で2試合、か。当初の予定は10人5試合だし、さすがに少なすぎるわね、それだと」
ウサギのキャラが真ん中に入ったTシャツにデニム短パンのモデルみたいな(実際モデルだそうである)金髪(金髪ばかりだが)の女の人が声を出す。バニ―・ボンバーというGWAの選手だ。変哲もない格好なのにバインバインな体型のせいで妙に色っぽい。胸も大きいし、腰もくびれてるし足も長いし…… 幼い感じが自分の売りの一つであるとは、金森も分かっているのだが、やはりちょっとうらやましい。じっと見ていた金森に気付いて、こんな状況だというのに軽く笑って手を振ってくれた。注視していたのがばれて気恥かしかったが、ともかく金森もちょこっと頭を下げておく。
小鳥遊「で、肝心なことだが。肝心なことなんだが、どうするんだ?」
そんな事をやっていたら、腕を固く組んで壁にもたれかかったまま小鳥遊が社長に尋ねた。皆も息を詰めて社長を見つめる。社長は、皆の緊迫した視線に怯みもせずゆるゆると、
社長「まず、考えられるのが中止するって言うこと。不慮のことだし人数も足らないならどうしようもない」
金森は、ギュッと思わず歯噛みをしてしまう。自分が選手として参加しないとはいえ、せっかくの旗揚げ興行がこんな形で中止とは。間近で本番を見る初めてのチャンスで楽しみだったし、準備も頑張ったのである。正直、納得できないという気持ちが強い。ローズが怒気を発し、
ローズ「認められませんわ! この私の興行が、このような馬鹿馬鹿しいことでキャンセルされ無駄足となるなんて!」
社長「そうですね。私も団体社長としてせっかくの旗揚げが、このような理由で中止では幸先が悪すぎて困る。とはいえ、人数が足らない、これも事実です」
社長は真面目くさった顔なのに奇妙な、どこかおかしげな光を瞳に帯びさせ、金森はそれに何故か見入ってしまう。
社長「選手を集める必要がある。ただ、フリーの人を集めるなり、他の団体に泣きつくなりも残り数時間では不可能でしょう。延期も予定等が詰まって色々な面で難しい。そこで」
言葉を切ってローズを数刻見つめ、その後ゆっくりとした調子で、
社長「ローズさん。あなたに出場していただきたい」
金森は、周りが息を飲んだのを感じた。まだまだ素人な金森には、ピンと来ない話なのであるが、学校の文化祭に伝説のロックシンガーを呼ぶくらいの無茶さなのであろうか?
2号「イツカミさん! 何を言っているのか分かっているのですか!」
2号が険しい顔で睨みつけるのに、社長は普段の困ったような笑みで、どうしてか傲然とすら感じる笑いでもって、
社長「もちろんです。GWAのエースにしてチャンピオン、ローズ・ヒューイットに風月会旗揚げ興行に選手として出場して頂きたい、そう言っているのです」
ローズ「……本気で言っているのですか?」
ローズの声は先ほどの大声よりは静かで、穏やかと言えるほどだったが、金森には何故か怖いと思った。怒鳴られるた際の怯えとは違う胃をペンチでつねられるような緊張を、当事者でもないというのに金森は覚える。
社長「無論ですよ、ミズヒューイット」
社長はそんな威圧感も意に介していないような、普段の調子で平然と答える。ローズは点検でもするような感じで社長を表情もなく矯めつ眇めつしていたが、しばらくしてあっさりと、
ローズ「分かりましたわ。出るのは構いません」
2号「お嬢様!」
激した2号を軽く手で制しながら、ローズは淡々と続ける。
ローズ「ただ、私に相応しい相手がいませんわね。2流3流の下郎と同じリングに上がるなぞ、私の品位に関わります。さて、誰か私を満足させられる方がいらっしゃるのですか、イツカミ?」
確かに、今、参加できる選手にローズと戦うに足る選手はいないと金森も思う。小鳥遊さんはかなり強いが名が売れている訳でもなし、ディアナさんは注目株とはいえデビュー前の新人、他のGWA選手は言わずもがなだろう。それなのに社長は軽々と、
社長「いますよ、目の前に、ね」
そう言って社長は、自分の横にいたその人を前に押し出す。その人は、
社長「ブレード上原、日本でパンサー理沙子のライバルとして一時代を担い、AACで聖人とすら称えられた伝説のレスラー。不足であるとは言わせません」
上原「え! いや、そ、その、私は引退した身でして!」
さすがに、いきなりそんな指名を受けると思っていなかったのか、焦る上原をローズはじっと見つめながら、
ローズ「なるほど、貴方の言いたいことは分かりました、イツカミ。でも、そのブレード上原ご本人もおっしゃっていますが彼女は既に引退した身、どんな美しいバラも老いれば萎れて散ります。その辺りは、どうお考えです?」
社長「それは、先程ご覧になったスパーリングで、ご自身がお答えをお出しできると思いますが? 私のような下郎が申し上げるまでもなく」
そう社長が言い終わると、二人はたがいを見つめ沈黙する。互いに顔は無表情と言っていいほど平坦なのだが、まるで睨みあっているようである。当事者の一人である上原は、突如の事におろおろとたがいを見比べ、2号は仇を見るように社長を睨みつけている。
そんな皆が固唾を飲む中、ローズはふっと唇をあげ微笑んだ。
ローズ「良いでしょう。その申し出を受けましょう」
上原「い、いいのですか!?」
上原の驚きに、ローズは軽い声音で、
ローズ「ええ。準備も出来ていないでしょうし、今の貴方では役不足なのは否めませんが、それでも巷に聞くブレード上原がどのような試合を取るか興味があります
上原「で、ですが」
ローズ「それに、今回の事は偶然とはいえ、そのような店を選んだ私の1号によるものでもあります。責任は取らねばならないでしょう。それとも、上原さんは私と試合をするのが嫌だと?」
嫣然とした笑いだが、追い詰めるようでもある。上原は慌てて勢いよく頭を振って、
上原「そ、それはそのそんなことはありませんが……」
ローズ「よろしい。直接、本気のあなたを体験できるのは、これが最初で最後の機会でしょうし、せいぜい私を失望させないでくださいな」
そんな宣告に、上原は少しの間、困ったように社長やローズへ視線をオロオロと迷わせたが、もうどうしようもないと悟り腹を決めたのか、決然とローズをまっすぐ見て、
上原「……はい。でも、ローズさんも、それ相応の覚悟をお願いします」
ローズ「そんなものは常にしております」
ローズは言下にそんな言葉を馬鹿馬鹿しそうに、でも笑いながら吐き出した。上原も金森が普段見たことのない、燃えるような瞳が覗き始めている。
小鳥遊「これで3試合、か。ぎりぎり、ぎりぎりってところだな」
小鳥遊のほっとしたような呟きに、バニーは頷き返すが、
バニー「そうね。でも予定は5試合、ローズお嬢様とブレード上原の試合は良いカードだけど、ちょっと足らないんじゃない? ビートンちゃんも余っているし」
社長「と言われましても、さすがに他に試合が出来る人なんて」
社長がそう口を挟むとバニーは笑って、
バニー「じゃあ、社長さんがやってみたら? プロレス団体の社長が、リングに上がるなんてのもたまにあるんだし。
社長「いや、それはもともとレスラーの方とかでしょう。私は運動不足の一般人ですよ?」
バニー「そんなの関係ないって。出てくれるなら、私がサービスしちゃうわよ」
社長「あ~と」
どんなサービスだろうか? バニーは色っぽいので金森も、ちょっとどぎまぎする。何だかローズが苛立たしげに照れている社長を見ている様な気もするが、まさかね。
バニー「足4の字とか腕十字とかぁ、いろいろ受けてみると世界が変わって楽しいわよ?」
社長「全力で遠慮しておきます」
何となく妙なことを想像した自分は汚れ過ぎかもしれないと、金森はちょっと恥ずかしい。
バニー「残念」
そんな風に、バニーが社長をからかっていると小鳥遊が、
小鳥遊「冗談はいいんだが、冗談はいいんだが、何かまともな考えはないのか?」
そんな不機嫌そうな問われ、余裕がないわね~ などどバニーは肩を竦めつつ、
バニー「そっちの子を使えばいいんじゃない? おさげの子とお団子の子、どっちか」
そう金森と美沙へむけて笑いかけた。
金森&美沙「ええ!」
突如、矛先が向いてきて二人は驚く。
バニー「練習生なのかもしれないけど団体の一員なんだし、こういうヤバい時は使えるものはガンガン使っていかないと」
いきなりの申し出に、金森はえ! と言う感じで慌てて考えが定まらない、美沙も同じような感じである。ただ、金森は思う、そう、自分は半人前かもしれないけど団体の…… そんな事を考え出した金森の前に上原が立って、
上原「いきなり何を言っているのですか! 彼女たちは、残念ですが未熟すぎます! 試合なんて出来る訳ないじゃないですか」
庇うように言ってくれる。のだが、その内容に金森はちょっとだけ、
ローズ「そうかしらね? 少なくとも今日、私が見たところ、そこのスニヨンの子は、中々動けるかと思いますわよ」
上原「あれは練習ですよ! 本当の試合とは別ですし、まだ素人同然なんです!」
ほんのちょっとだけムッとしてしまった。そりゃ、まだまだだろうけど、他団体のローズさんすら褒めてくれているのに、そう断言しなくても……
ローズ「まあ、本格的な試合と言うのも難しいでしょうが、相手がちゃんとしていれば問題はないでしょう? イツカミ、あなたのご判断は?」
社長は困ったように笑いながら、
社長「試合が足りないというのは確かです。ですが、選手については、上原に全面的に任しておりますので、上原が駄目だと言うのなら駄目ですね」
その言葉を聞き、ますます金森の胸にムカムカが募って来る。さっきは試合にも出れそうとか言ってたくせに、舌の根乾かぬうちにぃ~ それに私だって……
上原「そう言うことです。そして、私の考えでは金森は未だ試合に出せる水準ではありません。緊急時とはいえ、大事な子ですしを無理をさせる訳にはいかないのです」
ローズ「そうですか。責任者はイツカミで、イツカミがあなたに任せるというのなら、つまらないですが致し方……」
っ! もう時間はない! いっちゃうしかない!
金森「あ、あの!」
無茶で無謀なのは分かってるけど、でも!
金森「私も試合に出たいです! 上原コーチ!」
金森からそんな事を言い出すと思っていなかったのか、上原はたまげたように目を丸くするも、すぐ烈火の如く、
上原「話を聞いていなかったの! あなたを出すつもりはないの!」
上原に凄い形相で睨まれる。が、金森はひるまずに、
金森「でも! 団体の旗揚げ興行がまずいっていうのに、指を加えて見ているだけなんてかっこわるいじゃないですか!」
私だって何か出来るはずなのに! それが目の前にあるって言うのに! 何もしないなんて耐えられない!
上原「そう言う問題じゃないわ! あなたは半人前! 中途半端な試合なんてお客さまに見せられないし、あなた自身も危ないわ!」
周りが自分を見つめているのが分かる。身の程知らずと思われているのだろうか、未熟者の独り善がりだと思われているのであろうか、でもそんなの今は関係ない!
金森「だけど! ローズさんも大丈夫って言ってくれたじゃないですか! 上原コーチも大丈だ夫ってローズさんが言ったから出れるんでしょう! なら私も問題ないです!」
上原「下らない屁理屈を言わない! ふざけているの!」
金森「ふざけてなんていません! 私を出してくだ! っ!」
腕を振り上げた上原に、金森は思わず怯む。だけど、目だけは閉じない、閉じたら負けだと思う。しかし、予想していた痛みが来ず、バニーが上原の腕を掴んで抑えているのが目に入った。
バニー「今時、体罰は流行らないわよ、落ち付いて。団体を想って健気でいい子じゃないの」
上原「それは、そうなのかもしれませんが…… 無茶なモノは無茶です!」
上原の言葉にもバニーは特に動ぜず、掴んだ手を放しながら、
バニー「でも、心意気はちゃんと買ってあげないと。それに、ローズお嬢様も言っていたでしょう? それなりの相手なら大丈夫って」
上原「……」
バニー「ということで、私に任せてくれないかしら?」
バニーの言葉に、社長が横から訝しげに言葉を挟む。
社長「どういう意味です?」
バニー「私と彼女で試合を組んでくれってこと」
バニーからそんな申し出がされるとは思ってもいなかったので、金森はびっくりする。上原も意外だったのかちょっと口ごもるも、すぐ怒鳴りに近い大声で応え、
上原「そのような手間をあなたに取らせる訳には! 本当に素人に近いんですよ!」
バニー「大丈夫、新人を引き立たせる相手もよくするから、寒い試合になんてしない自信もあるわよ。それに、若い子を信じないで、その気持ちを汲まないのはまずいんじゃないの? 心配しすぎるのは、逆にマイナスよ」
バニーのおっとりとした声は、上原にはちょっと苦かったのか渋い顔をしながら、
上原「いや、それは、まあ、でも……」
バニー「私は加減だった心得てるから、怪我させたりなんて絶対しないし。今現在の人数不足をどうにかするのに、一番ちょうどよいと思うわよ、私と彼女は。それに、色々と教えてあげられると思うし、いろいろ」
上原「……」
いろいろってなんだろうと金森は思いつつ、上原を見つめる。皆の視線も集中し、注視の中で上原はギュッと目を閉じ悩んでいたが、しばらくして深いため息をつき、
上原「予定より試合が少なすぎるのも事実ですし、そのため猫の手も借りたいのは本当です……

そうして、躊躇するようにちょっと口を止めるが、次の瞬間、深々とバニーに一礼し、
上原「バニーさんがそう言ってくれるのなら、申し訳ないですがよろしくお願いします」
そう、言ってくれた。金森は思わず、
金森「やったぁ! ありがとうございます、上原コーチ! バニーさん!」
上原「まったく…… いい、貴方はまだまだ未熟なんだから、喜んでる場合じゃないのよ。色々ひどいことになるかもしれないんだから」
そう金森を注意しながら、バニーにむかって再度、頭を下げ、
上原「バニーさんも、この子はまだ新人ですので、お手柔らかにお願いしますよ、本当に」
バニー「分かってるわよ。加減は心得ているって言ってるでしょ。安心して」
上原「約束ですからね」
バニー「でも、調子に乗っちゃうかもしれないけどね。この子、可愛いから♪」
上原「バニーさん!」
上原のかなり強く念押ししているのに、金森は何だか不安になって来る。一体何があるのだろうか。
バニー「冗談よ冗談。そんな怒らないで。で、レイコちゃん?」
金森「は、はい!」
バニー「よろしくね。初めてだし緊張するかもしれないけど、ちゃんと優しくしてあげるから、ね」
そんなことを言いつつ浮かべられた、濃い色気を感じさせるバニーの妖しい笑みに、金森は何やら早まった気がしなくもないが、
金森(でも、せっかくの初試合、団体のためでもあるし無理言って出してもらったんだから、始まってもいないのにビビらせれたら情けなさすぎ!)
ならばと、気合いを入れるようにパン! と頬を両手で挟んでたたき、
金森「うん、よぉ~し! 頑張るぞぉ!」
そう元気よく声を上げて、自分のここ一番の笑顔を作ってみせたのであった。

続く。
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